本年(第2年)度は、中央政府が3年での完全復旧をめざした「中国式災害復興モデル」の展開の状況と問題点について、対口支援を担当した外部の地方政府が現地においてどのような復興項目を、どのようなプロセスによって進めてきたのか、住民はどのような形でそれに参加したのか、さらに現地のチャン族の日常生活と文化財の復旧の現状と問題点について調査、分析した。 中国政府は、中国式災害復興モデルを社会主義国家の優越性を示す、世界でも類をみないほどの速さと規模の巨大さ、質の高さを3年以内に完成させるとし、これをうけて担当の各省政府は、自省の資金を用いて資材、人材、技術などを被災地に持ち込み、道路や橋の復旧、学校や病院、公共機関、高層住宅の建設などインフラ整備を中心とした対口支援を行った。その結果、めざましい復旧速度とりっぱなハコモノをもつ現代化された地方都市や観光農村が出現した。「現代化」は、地元住民の期待でもあったが、結果的には、住民はできあがったハコモノを受け取るのみで、復旧復興建設における現地側のソフト面の育成はほとんどなされなかった。3年という短期間での復旧作業においては、設計や資材、人材調達などの段階で、水準に達していないという理由のために現地側が実質的にほとんど参加していなかったからである。 また文化財の復旧においては、国家級文化財以外は、従来の復元ではなく、出所不明とも思われる新たな文化的要素をとりいれたチャン文化が対口支援側の主導によって創出された。それは、農業生産を主とする農村から、観光業を主産業とする民族観光村への「発展」をめざした過程に創出されたもので、民族文化の復旧ではなく、観光客の視線を意識した外部者の創作した文化であった。
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