研究課題/領域番号 |
21401045
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
岸上 伸啓 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60214772)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 北アメリカ / 先住民 / 先住権 / 祝宴 / ナルカタック祭 / イヌイット / イヌピアット / 捕鯨 |
研究概要 |
平成24年度は、カナダにおけるイヌイットの捕鯨の現状についてオタワの漁業海洋省において2012年5月20日から5月27日まで調査を実施するとともに、米国アラスカ州バロー村で捕鯨祭ナルカックおよび鯨肉の村外への流通に関する参与調査および聞き取り調査を2012年6月25日から7月4日まで実施した。また、米国とカナダの先住権や先住民運動に関する文献調査を実施した。さらに、アラスカ先住民とカナダ・イヌイットの捕鯨の法的な根拠や問題点について先住権や先住民運動との関係から調査を行なうとともに、北海道道立北方民族博物館において環北太平洋地域の北方先住民による捕鯨やイルカなど小型鯨類の捕獲に関する情報を収集した。 カナダでは先住権の一部としてイヌイットによる捕鯨が、約50年間の中断を経て1990年代に復活し、実施されているが、狩猟・解体・分配の技術の継承が不十分であるという問題や巨額の経費を必要とするという問題があり、ヌナヴト準州以外では捕鯨は休止状態にあることが判明した。一方、アラスカでは気候変動の悪影響を受けながらも沿岸部のイヌピアットは捕鯨を実施し、捕鯨祭などを通じて鯨肉などの村全体での共食や分配が実践されており、彼らのアイデンティティの基盤であり続けている。 本年度は、これまで国内外の調査で収集してきたアラスカ先住民の捕鯨に関する資料や情報を分析し、その成果を中間報告として英文報告書を作成し調査地に還元するとともに、民博のホームページで公開した。また、成果の一部を3本の学術論文として出版し、2012年9月開催の日本カナダ学会や同年11月開催の日本文化人類学会一般公開シンポジウムなどで口頭報告を行なった。さらに現代の捕鯨民イヌピアットの民族誌を作成するための準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、ナルカタック祭の参与観察を実施することができ、アラスカにおける現地調査についての英文(中間)報告書を書きあげ、現地社会に結果を還元することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2012年7月の国際捕鯨委員会においてグリーンド・イヌイットの先住民生存捕鯨の申請が否決されたため、調査の必要性が生じたため、平成25年度に彼らの現状と先住権について現地調査を実施することにしたい。それ以外には、大きな変更がないため、平成25年度は米国とカナダにおける現地調査を継続し、平成26年1月には成果を公開するための国際シンポジウムを実施する。
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