本研究では米国アラスカ州のイヌピアットとカナダ北西海岸地域のヌーチャヌルス、カナダ極北地域のイヌイットの捕鯨活動を先住権との関連で調査した。イヌピアットの捕鯨は、国際捕鯨委員会の「先住民生存捕鯨」として実施されている。ヌーチャヌルスは歴史的にコククジラやザトウクジラを捕獲してきたが、捕鯨を先住権として主張しておらず、捕鯨を行っていない。一方、イヌイットの捕鯨はカナダ政府によって先住権として承認されており、約50年間の中断を経て1990年代に復活した。このように民族によって違いが見られるが、捕鯨はこれらの先住民族にとってアイデンティティの維持や世界観と深く関わっており、単なる狩猟活動ではない。
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