研究概要 |
21世紀を迎え、民族の混交は幾多の問題をはらみながら、ますます進行している。なかでも、朝鮮半島から拡散したコリアンは、ホスト社会に適応しつつも、コリアンどうしで協同している。また、ホスト社会に包摂されながら、融合されず、時に排除される。この点で独特の存在である。 本研究は、先行プロジェクトにより蓄積した基礎データと国際的な研究協力体制を活かし、第一に東アジアのコリアン・ネットワークに根差した生活文化を明らかにする。ここでは、本国のコリアンとの違いも焦点となる。その結果、第二にコリアン・ネットワークを形作る「適応―協同」の原理と、コリアン・ネットワークを取り巻く「包摂―排除」の原理を解明する。 これらにより、ボーダーレス化する東アジアで、民族の適応と協同、包摂と排除の動きがどう働いているかに迫り、民族の混交という社会のリスクを透明化する一助としたい。 本年度は、研究年度の最後として、プロジェクト全体の総括をおこなった。東アジアのコリアン・ネットワークについて、既存の研究では明らかとなっていなかった、ないし否定されてきた3点が明らかとなった。越域性、多重性、主体性の3点である。これに集約するプロジェクト全体の成果の報告書、および現地還元活動として、以下の書籍を韓国語で公刊した。朝倉敏夫・太田心平(編著)『韓民族海外同胞の現住所―当事者と日本の研究者の声』, 學研文化社, 2012年. (全344頁)
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