研究概要 |
明治年間に外国人が北海道を訪れ、アイヌ器物を蒐集し、それに関する記録や写真を残していることは、既に知られており、器物については悉皆調査もおこなわれている。 本研究では、そうした外国人とアイヌの人びととの関わりに注目するが、従来注意されてきたことすなわち、なにが収集されたか、収集物についてどんなことを記録したかということではなく、どのような方法でアイヌの人びとと交流し、器物を選択・収集し、また記録したのかということに注目する。 このため、本年度は、基礎資料となる記録類の調査、デジタルによる複写を中心におこなった。 (1)B.ライマン史料の調査・複写作業。連携研究者;財部香枝および研究協力者;東俊佑が、スミソニアン文書館(ワシントン,D.C.)、マサチューセッツ州立大学(同州アマースト)において調査。資料が膨大なため、今後も継続する。 (2)H.ヒラー書簡の概要調査。連携研究者;矢口祐人がミズーリ州立大学図書館(同州コロンビア)において調査。今後は内容の精査を含めた調査をおこなう。 (3)F.スター講義資料調査・複写作業。出利葉浩司がシカゴ大学図書館において調査。 (4)R.ヒチコック書簡類調査・複写作業。出利葉および連携研究者:山崎幸治がスミソニアン文書館(ワシントン,D.C.)において調査。 特に、スター資料は、彼が北海道で得た民族学的情報がどのように講義という場で活用されたかを知ることができ、スターにとってのアイヌの文化というものの位置を考えることができるものである。また、ヒチコック資料は、器物収集にあたって博物館側と交わされた文書であるが、論文に記されていない、収集時点での「交渉」がわかるものとして、本研究にとって重要なものである。
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