本研究は、従来の研究の限界を突破し、今まで申請者が作り上げてきた韓国、台湾、中国の研究者ネットワークをうまく利用することで、「中国」に向き合って現地化を図ってきた日系、韓国系、台湾系企業の比較分析を行うことを目的としている。 4年プロジェクトの最終年度にあたる本年度は、特に日本と韓国における中国進出企業の本社を対象にした調査を実施し、昨年度までに得られた知見の理論的説明に資するデータ収集を行った。両国で100社程度を対象にした調査を行った結果、(1)対中進出の歴史が浅い韓国系企業では独資での進出形態がほとんどで、最初から本社のマネジメントを中国に投入できる環境にあったこと、中国へ派遣する前の研修など制度面では日系企業の方が優れているのに対して、従業員個人の努力や事前学習の点では韓国の方が優れていたこと、(3)日系企業では派遣候補者の数が少なく、中国系従業員に依存せざるをえないと考えている企業が多いのに対して、韓国系企業ではそうした認識が弱いこと、(4)日系企業では、理想的には現地従業員に経営を任せるのがよいと考えている企業が3社に2社に及ぶのに対して、韓国系企業は、現在あるような駐在員を中心にしたマネジメントがベストだと考えているといった違いが見られること、などの興味深い知見が得られた。 進出先の中国の駐在員や現地従業員の特性の違いは、一部、こうした本社の姿勢、及び本社と中国との関係の違いに起因していると考えられる。こうした仮説は、すでに韓国での国際会議でも報告しており、今後、その妥当性に関する詳細な検証が必要となるだろう。
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