研究課題/領域番号 |
21402009
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
奥田 進一 拓殖大学, 政経学部, 准教授 (60365864)
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研究分担者 |
関 良基 拓殖大学, 政経学部, 助教 (40459269)
長 友昭 拓殖大学, 政経学部, 助教 (20555073)
平野 悠一郎 森林総合研究所, 研究員 (00516338)
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キーワード | 森林利用権 / 中国法 / 法社会学 / 自然資源 / コモンズ |
研究概要 |
今年度は、中国の森林という自然資源をめぐる権利関係の現状と特徴を、主に近現代における歴史的な発展経緯を踏まえて法社会学的見地から理解するために、内モンゴル自治区、黒龍江省、福建省、四川省、広西自治区、江西省において「権利関係」に焦点を当て、多面的かつ体系的な現地調査を実施した。調査では、事前に用意された質問票をもとに現地政府関係者や林業経営者を対象としたヒアリングを行うとともに、現地の農民や牧民が森林経営に関して巻き込まれた紛争事例を丹念に調べた。 その結果、今日の中国における森林の権利関係の複雑化・混乱・紛糾状況が、過去60年間の政策変化に起因するものであること、および現在展開中の権利確定政策の内実・方向性を確認した。また、森林の利用と管理における中国的コモンズが存在することと、権利関係の地域的多様性が存在することが解明された。 さらに、2007年に制定された物権法が地方の実務においても定着し、所有権と請負経営権との関係が明確になる一方で、権利関係の法的処理に伴う紛争が多発していることも確認できた。かかる紛争事例を通じて、中国において各種の森林関連事業を展開する各主体が有すべき権限と義務に地域的多様性が存在し、そのことが実務において大きな混乱を生じていることを明示することできた。 このほか、内モンゴルおよび四川省の農村調査を通じて、現在進行中の「国有・集体林権改革」の実態が、過去の請負経営権の創設と近似した現象であること、そして当該改革の実施に関しては、政府機関による情報統制が比較的強かったという印象を、各研究者が共通して抱いたことも大きな成果であった。
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