本研究は、「平和構築における現地社会のオーナーシップ育成の課題」について、総合的な検討を加えるものである。二年度目である平成22年度は、引き続き国際社会における「オーナーシップ」原則をめぐる歴史的背景と理論的基盤をふまえた視点の整理を行いつつ、海外での調査業務と成果報告業務を行った。本年度は、リベリア、ボツワナ、次にカナダで開催された国際関係学会において、成果報告の機会を得た。リベリアは、昨年度から本研究の中心的検討地域としているシエラレオネの隣国にあたり、国連の大々的な支援も入っている国であることから、比較参照の情報を得るために貴重であった。ボツワナでは、同じ問題意識を持つアフリカ内の研究者が集まる会議にて報告の機会を得たため、貴重な意見交換を行うことができた。同じように、カナダでの国際関係学会においても、同じ問題意識を持つ研究者間での意見交換を行うことができた。こうした機会を通じて明らかになったことは、国連やOECD/DACなどのオーナーシップ促進への取り組みにもかかわらず、ドナー主導体制や現地社会の多様性などの構造的仕組みによって生じる課題の克服には至っていないことである。また国際社会が中心的価値観とする自由主義の秩序が現地社会主導の平和構築と相反する可能性があることも判明してきた。今後の研究課題としては自由主義中心的な国際的な潮流の中で、オーナーシップ促進につながる具体的な方法論の探求である。
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