本研究では、ナイジェリア北東部を対象に、条件付現金移転~産前検診の受診を条件とした現金補助~ならびに妊婦教育に関して無作為実験を行った上で、2年間にわたり聞き取り調査を実施し、妊婦・乳児の健康管理(インプット)ならびに健康状態(アウトプット)への広範な効果をみる。3年目の今年度は、研究計画に従い、文献調査、収集済みデータの分析、第3回フォローアップ調査準備・実施(個人・家計調査(約900世帯)、村落調査(100村)、医療施設調査(約100施設)が対象)、同調査データの入力・校正・分析を行った。ベースラインおよび第1、2回フォローアップ調査データの欠損・不具合に関するフォローアップも併せて行った。そのため、調査自体ならびにデータ入力・校正作業に予定よりも時間を要したため、次の2テーマに絞って分析作業を行った。(1)条件付現金移転ならびに妊婦教育が産前検診の受診をどのように促すか、特に、妊娠月齢に応じてどのように効果が異なるかを検証した。(2)条件付現金移転を操作変数として受診の内生性をコントロールし、産前検診の効果を分析した。主に、出産場所(自宅、医療施設)の選択、出産時のトラブル、死産・新生児疾病、乳幼児の死亡・疾病、産後検診の受診、予防接種について検証した。これらの分析を本格的に行うこと、さらには主観的厚生、家計内資源配分等についての分析を進めることが、これからの課題である。また、本研究を発展させる形で、貧困と健康に関する新しい研究の可能性についても検討を進めた。
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