研究概要 |
2009年9月にルアンパバン県のヌゴイ郡において信用組合のある13村について、村長と信用組合の委員会メンバーへの聴き取りを含む予備調査を実施した。これに基づいて、対象を3つの信用組合に絞り、3月に、3つのスキーム(A, B, C)をもつ本調査を実施した。 スキームAは、質問票に基づく家計調査であり、対象村の家計についてセンサス調査を実施した。質問項目は、金融の流れ、生産構造、支出構造など多岐にわたっている。同時に、信用組台の委員への聞き取り、さらに帳簿を書き写して与信状況を精査する作業もおこなっている。これは、信用組合の果たす役割をミクロ経済学の視点から分析するためのデータとなる。 スキームBでは、村長や村の実力者たちに金融に結びつく村落事情の聞き取りを行った。特に近年政府によって焼畑が禁止されたことから、飯米の自給が困難となり、その結果、強制的に市場経済に巻き込まれることになった事情とその対応、特に金融面での対応、に聞き取りの焦点が絞られている。また近隣の村でも簡単な聞き取りを予備的に行って、村の置かれた環境で焼畑禁止の対応が異なることを明らかにしている。こうした多様性の確認抜きには適切な議論、そして国際協力は望めない。この点については、次年度に本格的な調査をする予定である。 スキームCは、160強の信用組合の帳簿のコピー収集、そして信用組合委員会への質問票調査である。幾つかの組合では預金蓄積が進み、かつて日本も経験した余裕金問題が発生している。この事から信用組合間での資金の融通の試みが始まっている。そこで、このスキームでは、信用組合の自立性(viability)の調査と同時に、余裕金問題への対応を日本の経験と比較する作業がなされることになる。この作業は、信用組合の意義をラオスのマクロ経済(特に信用組合をベースに持つ銀行制度)の局面で分析するための資料である。
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