本年度は2つの研究実績を挙げた。第1は、昨年に引き続き教育と経済的・社会的格差の関係などについてアンケート調査とインタビューを行ったことで、第2は、平成21年度に実施したアンケート調査の集計と分析結果の研究発表である。 アンケート対象地域は浙江省杭州市郊外および貴州省貴陽市郊外で、21年度に実施したアンケート調査票に若干の改訂を施し、高校3年・中学3年の生徒自身およびその親に対して調査を行った。また今年度は有名大学への進学校として中国でもっとも知られている高校の一つである、北京市の中国人民大学付属高校3年生およびその親に対してもアンケート調査を実施し、地方の学校と首都北京との比較研究のための情報を得ることができた。 22年度もアンケート調査と併行して現地の学校(今年度は特に省会都市(省庁所在地)以外地域)11校を訪問し、校長はじめ学校幹部に対し、生徒を取り巻く家庭環境や経済状況と教育格差に関するヒアリングを行った。訪問学校は以下の通りである。貴州省:水西中学、黔西一中、谷里中学、新店寄宿学校、朱家場寄宿中学、浙江省:慈渓中学、新城中学、徳清三中、新市初級中学、於潜中学、於潜初級二中。 平成21年度に実施した調査結果を分析し、中国経済学会学術研究会で2回の報告を行った。1回目は10月23日に京都大学で開催された西日本部会で、おもに子どもの成績と親の属性・家庭環境についての分析結果を、2回目は11月27日に拓殖大学で開催された東日本部会で、ここでは子どもの入学経路や進学先の学校種類(重点校、一般校)と親の属性・家庭環境についての分析結果を報告した。 学会報告で得たコメントを参考にしながら、報告結果の一部を雑誌『東亜』(霞山会)平成23年5月号に発表した。またヒアリングで得た知見は、研究代表者牧野が共編者となった労働経済学・人的資源論のテキスト執筆にも活用された。
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