平成23年度は、21年度、22年度に実施した調査を分析した中間結果をとりまとめ、9月に中国に出張して現地の専門家が主催した研究会で発表し、討論を交わした。われわれがとりまとめた調査結果の主たる結論は以下の通りである。1)高校のみならず中学校段階においても親の職業、収入、学歴と子どもの進学先学校(進学に有利な重点学校と一般学校)や学校での成績、教育アスピレーション(たとえば希望する最終学歴)などとの間に統計的に有意な関連性があった。2)特に子どもの教育パフォーマンスに対しては母親の影響が強かった。3)また首都北京と浙江省、貴州省など地方都市との間にも、親の属性の差では説明しきれない、子どものもつアスピレーションの差が観察された。中国における研究報告は、北京大学教育学院、北京師範大学教育学院、南京大学社会学院、南京農業大学人文社会科学学院、雲南大学高等教育研究院で、とくに社会学者、教育学者を中心に行った。われわれ経済学者が実施、分析した研究成果を他の学問領域の専門家がどのように評価するか非常に関心があった。一連の研究報告を通じて、中等教育機関、特に中学校を対象としたわれわれの調査は中国ではまだ少なく非常に貴重な調査で、統計的に厳密な分析に堪えうるものであることなどが高く評価され、21~23年度の調査研究で終わらせることなく、当時のアンケート回答者に対する追跡調査を実施し、経済格差と教育格差が時間の経過とともにどのように変化するかのさらに調査研究を進めるよう強く勧められた。
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