本年度は、実施計画にもとづいて、以下のような調査と研究を行い、継続的な研究であるため、学会報告、研究成果の論文・図書等による公表等もおこなうことができた。 1)2009年8月にイギリス(ケンブリッジ州のウィリンガム教区)の歴史資料調査を行い(ケンブリッジ州公文書館、ケンブリッジ大学附属図書館、ケンブリッジ市民図書館)、教区を越えた親族ネットワークとフェンの利用に関わる共同関係に関する史料の存在を確認した。 2)2010年2月にドイツ(ハノーバー州オスナブリュックおよびハノーバー)の現地の歴史資料調査を行い(ハノーバー州立図書館等)、農村社会における居住構造に規定された家族構造や堤防管理組合の共同性に関する史料等について見通しをつけた。 3)比較研究のための分析軸となる上塩尻村の共同性の構造についての研究は、a)佐藤隆一家文書の整理(目録作成とデータベース化)および資料撮影の作業を進め、b)従来の研究成果を元にして、世界経済史学会報告(ユトレヒト、8月)、日本村落研究学会での報告(京都府綾部市、11月)等の学会報告を行い、c)共同性の構造を「飢饉」の切り口から総合的に考察した著作の出版刊行(『飢饉・市場経済・村落社会―天保の凶作からみた上塩尻村―』刀水書房、2010年3月)等を行った。 4)関連する資料調査を上田市立博物館、および新潟県西蒲区旧福井村・旧中郷屋村を中心に実施することによって、日本の村落的共同性の実態に関する知見を拡大させた。
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