本研究は中国都市部の「社区」(コミュニティ)に焦点を当て、国家と社会の関係の再編過程における「社区居民委員会」の実態調査を通じて、都市部における住民自治のあり方と、それが中国社会の支配構造にもたらす影響を社会学と政治学のアプローチから実証的に分析するものである。 上記の目的を達成するために、代表者唐燕霞と連携研究者李暁東、江口伸吾、南裕子は平成23年7月25日に一橋大学で研究会を行い、最終年度の現地調査の計画や方法及び成果発表の方法などについて議論を行った。そして、平成23年8月27日~9月8日にかけて、代表者唐燕霞と連携研究者李暁東、江口伸吾、南裕子は中国の西安市、昆明市と大理市の民政局や居民委員会などでインタビュー調査を行った。さらに、唐燕霞と李暁東及び海外研究協力者李路路、張永宏は12月6日~9日に深〓市の民政局や居民委員会などでインタビュー調査を行った。その後、12月10日に広州市中山大学にて研究会を行い、中山大学の学者や大学院生などと自治について活発な議論を行った。さらに、平成24年2月に唐燕霞は南京大学社会学院朱安新先生と研究協議を行い、南京市での調査状況などについて議論を行った。 以上の研究活動を通じて、地域的特性と居民委員会の発展の多様性などが確認できた。特に、最終年度では経済があまり発達していない地域での現地調査は、これまで2年間の調査地と比べて、基層自治について多くの点で異なっている。また深〓市での現地調査は自治とは違った方向性-国家の基層社会に対する社会管理に関する新たな動きを確認することができた。3年間の現地調査を通じて、研究成果をまとめるための基礎的資料やデータを提供することができて、今後はこれらの現地調査結果を踏まえながら、その成果を広く発信できるように出版物という形で、研究成果をまとめる予定である。
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