本研究の目的は、紛争後のリベリア社会において深刻化している薬物汚染の実態を調査するとともに現地の関係者と協力しながら、薬物依存症者のリハビリテーション促進のための方策を検討することにある。 2010年度は8~9月にかけてリベリアの首都モンロビアのストリートで生活をする当事者(薬物依存症者)へのインタビュー調査を実施した。またモンロビアの薬物依存症者のためのリハビリテーション施設であるVictory Outreach rehabilitation Homeを訪問し、そこでの回復プログラムに参加する当事者たちへのインタビュー調査を行った。さらにモンロビア市内で、薬物依存症者を含む社会的弱者たちに対して支援を行っているBaptist Churchを訪問し、スタッフへの聞き取りを行うとともに、薬物依存症者たちのグループディスカッションやFeedingを参与観察した。2011年2月には、リベリア同様、紛争後の薬物乱用の問題が深刻化している隣国シエラレオネ共和国を訪問し、現地の薬物依存症者への聞き取り調査を実施した。リベリアとシエラレオネの薬物依存症者へのインタビューを通して、両国の当事者のニーズを比較した。 両国とも10年以上にもわたる紛争を1990年代および2000年代前半に体験しているが、薬物依存症者の社会統合という点においては大きな相違がみられた。紛争終結から8年以上も経過しているにも拘わらず、リベリア社会では、いまだ元戦闘員である薬物依存症者の存在が街のあらゆるところで顕在化しており、社会的排除の対象となっている。一方、シエラレオネでは、少なくとも元戦闘員は自らの過去をクローズして、invisibleな薬物依存症者として社会で生活している。この相違に対する分析を更なる文献および現地調査で進めていく予定である。
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