本研究の目的は、紛争後のリベリア社会において深刻化している薬物汚染の実態を調査するとともに現地の関係者と協力しながら、薬物依存症者のリハビリテーション促進のための方策を検討することにある。 2012年度は8月~9月にかけて、リベリアの首都モンロビアを訪問し、本研究の最終年として、薬物依存症者のフォローアップ調査、薬物依存症者のためのリハビリテーション施設の現状、Drug Abuseに関する現行法であるPublic Law(1976)および現在審議中のDrug Lawをめぐる動向についての情報収集を行った。 モンロビア都市部では、現地の企業がNGOと協力して、ストリートで暮らす若者(その多くが薬物依存症者)に対する支援活動を展開し始めた。コミュニティの清掃作業や短期職業トレーニングを提供したが、その後の雇用が保障されていないため、その場限りの支援となっている。こうした長期の見通しのない支援では、若者を薬物や貧困から救い出すことは困難である。さらに、リハビリテーション施設の入所者は、年々増加傾向にある。入所者の背景については、本研究の開始時点では紛争を契機にドラッグを開始した者が主流であったが、現在は紛争後にドラッグを始めた若者層が増加している。ドラッグ使用が、元戦闘員のみならず一般市民にも蔓延していることが懸念される。過去3年間継続審議されているDrug Lawに関しては、薬物事犯に対して、例えば刑期が15年~60年というような厳罰が科されている。内容修正のうえ、一刻も早い制定が待たれる。 リベリアの薬物依存の問題解決に向けて、職業訓練プロジェクトはそれだけではほとんど機能しない。薬物に対する治療と教育、職業訓練、その後の就労・雇用の機会の提供といった多面的な介入が必要となる。
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