ドイツのノルトライン・ウェストファーレン州の「高齢者ケア施設」および「世話カフェ」と呼ばれる「出かける場」づくりを中心とした現地調査を実施した。いずれも、認知症ケアにとって極めて重要な意義を持っ取り組みであり、それについての情報を収集し、同時に今後のより詳細で個別的なケアに関する、日独の情報交換の実現を展望できたのである。 「高齢者ケア施設」ではソーシャル・ワーカーにインタビューして、施設内での認知症のある人へのケアに関する日常生活の方針、スタッフ研修、さらに医療や投薬を抑制しながらのケアの推進体制など、身体抑制のない貴重な実践について知ることができた。また、その施設が地域住民への支援として準備している「センター・プラス」の試みは、認知症の早期発見とともに、家族への継続的な支援に向けた開かれた施設づくりとして印象深いものである。また、入居者の80%について施設での「看取り」が実現できていることも、非常に大きな意義を有している。さらに、次年度は施設内でのソーシャルワークについて、具体的で、個別的な調査を実現できる基礎を得ることができた。 「世話カフェ」は民間の非営利組織(=ディアコニー系)の支援で、家族と認知症のある人が寄り合える、つまり私的な居宅から公共圏たる「場」に通えることを保障するものである。その唯一の職員がソーシャル・ワーカーであり、その「場」をつくり、2時間の楽しい出会いをつくりあげている。いわゆる、認知症のある人や家族を孤立化させない取り組みの一つとして特筆すべき取り組みである。さらに、次年度では「世話カフェ」の複数事例を調査しつつ、そのソーシャルワークの意義をまとめたい。
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