研究概要 |
本年度の研究計画の重点は、ドイツにおける「ソーシャルワーク」の実践を、より具体的に調査して、その調査をもとに文献においてその意義や課題をまとめることにある。 まず、ソーシャルワークの基本的な概念について、「ソーシャルワーカー」を養成するデュセルドルフ大学の単科専門校で、その任にあたる教員にインタビューを実施した。そこで、明らかになったことは、[sozialarbeit][sozialpaedagogik]、前者は公的扶助、後者は教育支援、という従来の分化は消滅して専門職の名称は残るものの「ソーシャルワーク」での差異はなくす、ということである。 次いで、高齢者ホームの「Oberkasser」において施設長であり、ソーシャルワーカーでもあるPeter, Wiens氏に施設内でのソーシャルワークの役割について質問を行った。それによれば、利用者への直接のケアにはかかわらず、利用者の相談やケアワーカーの調整、あるいは家族支援などの業務が中心である。さらに、近年の新しい試みは施設内に近隣の認知症のある人が集まれる、いわゆる「Zentraru Plus」を起こしていた。施設における、近在の人への支援事業として興味深い。 障害のある人への支援、ドイツでは幼児期から死に至るまで、一貫した支援組織がある。つまり[Leben-hilfe]という民間非営利で、非宗教的な組織である。インタビューに応じてくれたのは、Erika, Hmpe女史ソーシャルワークを担当している。この組織は「親の会」からスタートして全国組織へと成長してきたが、彼女はこの地区での支部の発足から関わっている、という。ソーシャルワーカーは大卒が普通であるが、彼女は高卒でその任にあたっているが、「ソーシャルワーク」の経験が重視される職場であることが、印象的であった。 ビーレフェルト市に「[財]Bethel」があるが、ここでは「施しより仕事を」というコンセプトのもとで、障害のある人に対して仕事づくりが進められていた。その基本は、仕事の人を合わせるのではなく、人に仕事を合わせる、という魅力的な「ソーシャルワーク」である。わが国では、個々人に仕事を合わせることは「わがまま」の領域とされるが、この「ベーテル」ではそれが当然こととして、実行されていた。 ソーシャルワークの現場を歩いた。強い印象は人として生活すること、それは社会的に生きること、それを支えるソーシャルワークの誇らしさに出会えた。今後の課題は、その現場のソーシャルワークをいかにして活字にそして論文化しえるか、というテーマである。
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