平成21年度は、新型インフルエンザ勃発と、世界同時不況のため、ラテンアメリカの社会不安も一挙に増大した。また、アルゼンチンでは、ブエノスアイレス都心部でデング熱が広がり始めたため、今年度は、ブラジルとメキシコにおいて調査を実施した。 ブラジルでは、主にサンパウロ大学において日系大学生を対象として、パーソナリティテスト(ポルトガル語)と、スペイン語による面接調査を実施し、男性4名、女性7名の資料が得られた。メキシコでは、主にメキシコ国立自治大学において、日系大学生に同じパーソナリティテスト(スペイン語版)を実施し、男性7名、女性8名にスペイン語で面接調査を行なった。 上記資料を検討した結果、両国の日系大学生については、日本における日本人大学生と比較した場合、明らかに、上昇志向(Aspirations)が強く、意欲的、野心的傾向がみられた。面接調査において、特に上記の点が明確化しつつあり、現代日本の若者の現状維持、現状満足的な傾向と異なる点が明らかになっている。(統計資料は今後3年間かけて集積していく計画。) また、日伯援護協会の移民資料館にて、広範な資料の集積を行なったことと、メキシコ教育省の日系移民に詳しい担当者との会談が実現し、さらに、メキシコ精神医学研究所を通じて、関係資料の探索が可能になった。 本調査研究の基本的発想は、現代日本の若者の、志希薄化の問題を検討する点にあるが、その原因を明らかにし、打開するための糸口になるという確信を、今年度の調査でさらに深めることができた。次年度以降、中間結果を現地で小講演形式で紹介しつつ、日系人の「自分とは何か」という問題意識に絡めて、今後の調査協力への動機づけとしていく計画。
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