100年前、神経衰弱と呼ばれる症状が日本全国に広がり、森田正馬はそれを「神経質」として概念化、広範な治療実践の結果「森田療法」として完成した。他方、やはり100年前に、ラテンアメリカへの移民が開始され、その子孫である2/3/4世が現在、日系人として現地で生活している。 現代において、日系人のパーソナリティに上記の神経質的性格傾向がみられ、几帳面で上昇志向が強い面がある一方、日本では若者の無気力傾向や上昇志向が希薄な点が、他の研究者らによっても指摘されている。本調査研究では、日系と日本の若者を比較することにより、日本の若者の「志」の低さの原因を明らかにすることを通じて、青少年教育の方向についての示唆を得ることを目的としている。 過去数年間で、主にメキシコとブラジルにおいて面接と統計資料の集積に従事し、本研究に必要な基礎資料がすでに得られているので、今年度は特にアルゼンチンに主力をそそぎ、面接と統計資料の集積を進めた。昨年度からすでにアルゼンチン調査が開始できており、今年度はそれに加えて、男性7名と女性12名の資料を得ることができた。また、比較のための日本側の資料の整備と検討も進めた。 本年度において、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンにおける資料の均等化が達成され、男女間の資料の数量的均等化も達成できた。本研究の構想を成就するための資料がそろった後、メキシコ精神医学研究所等において、最終段階としての検討を進め、当初の目的達成のための基礎的活動を完了するに至った。
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