本研究では、発達障害児とその家族のための社会的支援を日本とニュージーランドで比較検討することを目的とした。本年の成果は、以下の2点である。 第一に、ニュージーランドの研究分担者との連携の下、ニュージーランドクライストチャーチ市にて、施設訪問ならびに研究者、就学前施設の職員、発達障害に関連する施設の職員との意見交換会を持ったことである。意見交換会では、両国の社会的支援の違いを議論した。その結果、まずニュージーランドにおいても、日本と同様で保育者、保護者が発達障害に過敏になりすぎる部分があり、そのことにより、本当に子どもが必要としている支援を見失ってしまう現状が見られることを共通理解として持った。次に、ニュージーランドと日本では就学前施設におけるアセスメントの意味合いが異なることを議論した。 上記の意見交換会の議論を踏まえ、ニュージーランドの研究分担者と今後の研究の打ち合わせをした。主に、研究で使用するアンケートの素案を作成した。アンケートは発達障害の子どもを持つ日本とニュージーランドの家庭各100戸を対象とするものである。両国の発達障害の子どもを持つ親のストレスを明らかにするためにアンケート項目を各国に合わせてアレンジした。また、ケーススタディの方法や対象とする家族、フォーカスグループによる調査の方法についても確認した。 研究は、(1)日本・ニュージーランド両国の障害児を育てる母親・父親に対して子育てに関する意識に関するアンケート(量的研究)、また(2)日本・ニュージーランド両国の障害児を育てる母親、父親、そして両親に対する、フォーカスグループインタビュー(質的研究)を実施した。両国の母親・父親に対するアンケートより、日本では地域社会を中心とするソーシャルサポートが充実していること、また両国とも母親の負担感の大きさに比べ父親の負担感が少ないことが明らかになった。さらにグループインタビューより、両国の両親とも夫婦関係の親密さが、育児ストレスを軽減することが明らかになった。
|