研究概要 |
フランスでは,国連障害者権利条約への批准に向けて,インクルーシブな教育に関する大きな変革が訪れようとしている。その契機は,本研究が取り組む2005年2月11日法であり,次いで"あらゆる障害児が居住地に最も近い学校に学籍を登録する"と明記するに至った教育法典である。しかしながら,実際の小・中学校への障害児の就学は進まない。本研究の目的は,法律とシステムが変わって実態の変わらない状況を"周辺事情"から問題を明らかにすることである。 本年度は,海外の協力者との研究打ち合わせ,フランスMDPHの障害認定基準と個別支援計画の実際に関する資料収集,各種統計資料の収集,関連文献を網羅的に入手した。具体的な内容は,以下のとおりであった。 平成21年9月と平成22年3月に実地調査ではUNAPEI(フランス知的障害者・親の会連盟),INS-HEA(フランス障害・適応教育高等研究所),CREAI(障害のある児童青年地域圏支援センター)において研究の進め方と就学決定に必要な"個別障害補償計画"や"個別就学計画"を新たな作成ツールであるGEVAについて知見を得た。フランス自閉症協会副会長Agnes WOIMANT(アニエ・ボワマン氏)からは,自閉症のある子どもの保護者としての現状と教育の実際について聞き取りを行った。CTNERHI(国立障害教育研究技術センター)において,国内及びインターネット上で入手できない1995年以前の国民教育省通信(notes d' Information),同様の統計資料などを収集した。これらによれば,家庭に残る障害のある子への対応も大きな課題とされていた。厚生省管轄教育施設で推定15,000人,家庭で教育される重度重複障害児のうち,未就学の子どもが推定5,000人で合計20,000人が未就学とされ,前者は,就学でなくとも施設内で専門の指導員による「特殊教育」を享受しているが,家庭における未就学児は真に解決策を待っている。
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