研究概要 |
本年度は,研究計画に基づいてフランスからの研究者の招聘,実地調査,さらにWebによるアンケート調査のためのシステム構築を進めた。まず,フランスからAndre Philip氏(INS-HEA名誉所員・Revue du C.E.R.F.O.P.編集主幹)を招聘し,日本の教育システムを理解した上で,知見の提供と研究協議を実施した。とりわけ,就学から社会への統合のいたる段階として重要な中等教育における適応困難のある生徒についての対応,ならびに,その歴史的な背景について知見を得るとともに,フランス教育学会のシンポジウムを学会と共催で実施した。実地調査では(1)CTNERI(国立障害教育研究技術センター)資料室(現在は改組して,Maison des sciences sociales du handicapの資料室)において2010-2011にかけて刊行された障害のある子どもの就学に関連する図書資料,(2)l'ecolenormalesuperieure de Lyon(ENS)(リヨン高等師範学校)では「Handicap & Scolarite 2011 Les conditions de reussite des parcours de scolarisation」に参加することで,フランスの2005年2月法の2つの柱である「アクセシビリティ」と「補償」の基本的な考え方,(3)UNAPEI(フランス知的障害者保護者連盟)では,重度の障害を持つ親の就学の実際や法的な背景について情報を収集した。ここでは,高等差別禁止機関として2004年に設置されたHALDEの機構改革(廃止・移行)など重要な情報を得た。また,INS-HEAの出版物・研究資料,国民教育省の障害や不適応のある子どもの教育に関する資料の収集,分析を進めた。 実地調査、招聘,資料収集,分析を進めたことで,権利条約批准に至る法令等の変遷を把握した。今後,さらに保護者への直接の聞き取りが重要となる。
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