研究概要 |
台湾北部の大屯火山地域は優勢な地熱活動を有しながら過去1万年以上にわたってマグマ噴火を行っていない.なぜこのような特異な活動形態が維持されているのかを知ることは,長い休止期の後に発生する大規模噴火の発生過程を考える上で貴重な知見が得られると期待される.本研究者らの最近の研究成果では,火山活動は,地表からのマグマ噴出が容易な形態から困難な形態まで多様であり,その多様性は,マグマの上昇を阻害する何らかの要因が地下に存在するためと考えられる.このような観点から,本研究は,台湾の大屯火山地域の地下構造と火山ガスの散逸状況を調査して,九州の火山活動・地下構造と比較することを目的としている.初年度は,大屯火山群の概要を把握し,VLF-MTによる表層の電気伝導度分布調査を行った.その結果,大屯火山群の中でも特に七星山の深部から火山性の流体が上昇し,構造に支配されつつ南西側の硫黄谷・北投温泉,および北東側の大油坑に広がっていることを示唆する高電気伝導度域の分布が明らかとなった.九州の伽藍岳周辺の表層電気伝導度分布と比較すると,七星山周辺の30mS/m以上の高電気伝導度領域の面積は4平方km程度であり,七星山の深部から供給されている火山性流体の量も別府温泉地域の量に匹敵するのではないかと思われる.
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