研究概要 |
台湾北部に位置する大屯火山群は,長期間マグマ噴火を行わず地熱活動が活発な火山である.昨年度の表層電気伝導度分布の研究によって,大屯火山群の中でも特に七星山の深部から火山性の流体が上昇し,構造に支配されつつ南西側の硫黄谷・北投温泉,および北東側の大油坑に広がっていることを示唆する高電気伝導度域の分布が明らかとなった.平成22年度(一部23年度に繰越)は,データが不足していた地域の補充観測を行うことで,金山断層の以北では低電気伝導度域となることをより明らかにした.また,地下2km程度までの構造を明らかにする目的でAMT観測を行った.あいにく観測期間が台風の接近による豪雨と重なったために精度のよいデータを取得できなかったが,七星山の地下浅部に低比抵抗域が存在することが明らかとなった.これらの成果は台北市で開催された西太平洋地球物理学会議(WPGM)において発表し,合わせて台湾地域の地殻変動・火山活動・地熱活動に関する情報収集を行った.また,比較対象としている九州の火山地域についても調査を継続し,阿蘇火山,鶴見・伽藍火山,九重火山周辺の表層および浅部の電気伝導度構造を明らかにした.その結果,九州の火山において,地熱活動の強さと高電気伝導度領域の面積との間には正の相関が見出され,台湾の大屯火山群の結果を重ねると,七星山の深部から供給されている火山性流体の量が別府温泉地域の量に匹敵するという推定にいたった.この結果は,台湾の大屯火山群が本研究者らが提案している「地熱活動卓越型」の火山活動を行っていることを示している.
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