研究課題
初期地球海洋環境に特異的に出現した縞状鉄鉱層の成因に関して国際的論争が展開されている。近年、微生物活動の関与が強調されているが、それをサポートする地質学的データと有機化学的データは圧倒的に不足している。そこで、本研究では、グリーンランド、南アフリカとカナダで野外調査を行い38-30億年前に形成された縞状鉄鉱層の堆積環境を規定する。最新鋭の機器分析を通して有機物の窒素、炭素、硫黄同位体組成、バイオマーカー組成を決定し、微生物関与の証拠を提示する。本研究の結果と、外国研究者の室内シミュレーション実験とを総合し、縞状鉄鉱層形成に微生物が関与したこと、微生物のタイプが時代ごとに変遷したことを新たなモデルとして提示してゆくことを目的としている。本年度は南アフリカのバーバートン地域とカナダのランビーレイク地域および比較研究として海底熱水鉱床の地質調査、試料採集を行った。採集された試料を用いて各種化学分析も行われた。その結果、バーバートン地域では、32億年前に海水からクロム酸化物が沈殿する事が分かった。北海道大学の協力のもSIMSによる酸素同位体分析を新たに展開し、クロム酸化物は酸素発生型の光合成によって酸化的環境が蔓延したためと結論つけた。その成果はGoldschmidt会議で公表された。またランビーレイク地域では30億年前の海洋環境における酸素発生型光合成微生物と化学合成細菌の生態系の対比に成功し、更に今年度の地質調査から海底熱水の強弱と微生物活動の関係が具体化された。現世および近過去の海底熱水鉱床では、海底熱水の変遷に伴い鉄酸化菌を主体にした生態系が発達することが見いだされ、縞状鉄鉱層成因にも結びつく考えが得られた。
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