研究概要 |
島弧・大陸弧-海溝系において,その3分の1の火山列の背弧側(超背弧)に,ハワイやアイスランド,デカン高原を代表するマントルプルーム成因とは明らかに産状が異なる活発な玄武岩質マグマ活動が存在する.これまで同火成活動は偶発的に派生したマントル熱異常(もしくは小規模マントルプルーム)に起因すると考えられていた.しかし,我々は,同火成活動が沈み込み帯に伴う定常的なテクトニズムがトリガーとなり,410km以深のマントル遷移層・含水ウォズリアイト(カンラン石β相)の脱水・溶融を引き起こすことで生じる,とする新しいマグマ成因論を作業仮説として提案する.本研究目的は,対象地域(模式地)の盤石な地質・岩石化学データに基づき「超背弧」マグマ成因論を構築し,「超背弧」を「中央海嶺」,「ホット・スポット」および「島弧・大陸弧」に次ぐ,地球上の第4のマグマ生成場として確立することである. 地質調査対象地域であるパタゴニア地方,ソムンクラ・カンケル台地は,平成15・18年度にソムンクラ台地北部地域において重点的に先行調査を実施している.昨年度の調査で同地域南部とカンケル台地の重点調査を計画したが,ラウンドオーナーとのネゴシエーションに時間がかかり,結局のところ予備調査のみにとどまった.しかし,第2候補に選定していたメンドーサ地域(上記研究テーマに関連),セロ・ネバド火山本体およびその周辺域に分布する火山岩類の採取および地質調査には成功した.これにより,ソムンクラ・カンケル台地のみに留まらず,パタゴニア地方北部の火成作用の成因の解明に着手できるようになった.本年度は,引き続きソムンクラ台地全域およびカンケル台地の火成活動の時空変遷を明らかにするため,同地域を中心に地質調査を行う.本年度の地質調査は2月上旬から約45日間(うち準備・移動・撤収で15日間)行なう予定である.
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