研究概要 |
島弧・大陸弧-海溝系において,その3分の1の火山列の背弧側(超背弧)に,ハワイやアイスランド,デカン高原を代表するマントルプルーム成因とは明らかに産状が異なる活発な玄武岩質マグマ活動が存在する.これまで同火成活動は偶発的に派生したマントル熱異常くもしくは小規模マントルプルーム)に起因すると考えられていた.しかし,我々は,同火成活動が沈み込み帯に伴う定常的なテクトニズムがトリガーとなり,410km以深のマントル遷移層・含水ウォズリアイト(カンラン石β相)の脱水・溶融を引き起こすことで生じる,とする新しいマグマ成因論を作業仮説として提案する.本研究目的は,対象地域(模式地)の盤石な地質・岩石化学データに基づき「超背弧」マグマ成因論を構築し,「超背弧」を「中央海嶺」,「ホット・スポット」および「島弧・大陸弧」に次ぐ,地球上の第4のマグマ生成場として確立することである. 地質調査対象地域であるパタゴニア地方,ソムンクラ・カンケル台地について,平成21年度22年度の調査で全地域の系統サンプリングおよび地質調査を完了することが出来た.今後,室内実験において噴出年代および地球化学的特徴を得ることにより,ソムンクラ台地およびカンケル台地全域の火成活動の時空変遷を明らかにすることができるだろう.今後はこの基礎データを基に岡地域の火成活動がマントル遷移層起源であるか否かについて,高圧実験データなどと併せて検証して行く予定である.その他の研究成果としては,2010年度日本地球化学会年会(立正大学)において「南太平洋-パタゴニア地域の地球科学総合研究」というセッションを立ち上げ,我々のこれまでの成果を発表したほか,国内の同地域の研究者らと意見交換を行い,今後の研究方針や共同研究の可能性などについて議論した.
|