研究概要 |
融雪洪水期の平成22年5月6日~5月11日,夏季成層期の平成22年8月26日~9月1日および秋季循環期の平成22年10月13日~18日に北アドリア海ソサ川河口域に出向き,4つの観測点(T1,T3,T4およびT5)を設定するとともに,多項目水質計を駆使して水温,塩分,クロロフィルa(以降,Ch1-aと略記する),pHおよび濁度の鉛直分布を測定し,塩淡成層の強度やその水平面的な拡がり等の現地調査を実施した.さらに,同観測点においてダイバーおよび採水時の水深が正確にモニタリング可能な新型採水器を採用して,それぞれ底泥コア(コア長約0.3m)および底泥直上の海水,躍層・表層の海水(各2リッター)を採取した.これらの試料に含まれる総水銀、メチル水銀およびSS中のメチル水銀濃度等については,ヨゼェフ・ステファン研究所で事前処理を行った後,帰国後,鹿児島大学および国立水俣病総合研究センターで分析された.その結果,以下のようなことが明らかとなった.(1)最もソサ川河口から離れた海側の観測点(T1)における塩分および水温の鉛直分布については,すべての観測日において塩淡成層が出現していた.とくに,融雪洪水期の2010年5月9日には,水表面から水深1mの表層で約5℃の水温差および25psuの塩分差が認められた.これは,融雪に伴うソサ川からの冷たい淡水の流入によって生じた水理現象と判断される.(2)さらに,海水に含まれるメチル水銀濃度および総水銀に対するメチル水銀比の値が,密度躍層近傍でピークに達していることが、水俣湾の現地観測結果と同様に認められた.(3)また,底泥コアの分析結果に基づけば,海側の観測点からソサ川河口に近づくにつれて,底泥に含まれるメチル水銀濃度が上昇する傾向が確認された
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