研究概要 |
北部アドリア海ソサ川河口域に4つの観測点(T1,T3,T4およびT5)を設定して,多項目水質計を駆使して水温,塩分,クロロフィルa(以降,Ch1-aと略記する),pHおよび濁度の鉛直分布を測定すると供に,塩淡成層の強度やその水平面的な拡がり等の現地調査を実施した.さらに,同観測点においてダイバーおよび採水時の水深が正確にモニタリング可能な新型採水器を採用して,それぞれ底泥コア(コア長約0.3m)および底泥直上の海水,躍層・表層の海水(各2リッター)を採取した.これらの試料に含まれる総水銀、メチル水銀およびSS中のメチル水銀濃度等については,ヨゼェフ・ステファン研究所で事前処理を行った後,帰国後,鹿児島大学および国立水俣病総合研究センターで分析された.その結果,以下のようなことが明らかとなった,(1)最もソサ川河口から離れた海側の観測点T1での塩分および水温の鉛直分布は,すべての観測日で塩淡成層が出現していた.特に,融雪洪水期の2010年5月9日には,水表面から水深1mの表層で約5℃の水温差および25psuの塩分差が認められた.(2)海水に含まれるメチル水銀濃度が,密度躍層近傍でピークに達していることが認められた.(3)底泥コアの分析結果に基づけば,海側の観測点からソサ川河口に近づくにつれて,底泥に含まれるメチル水銀濃度が上昇する傾向が確認された.(4)水銀濃度に影響を及ぼす各種水質指標を明らかにするため,2変量相関分析および重回帰分析を行った.メチル水銀と各種水質指標との2変量相関分析の結果に基づけば,水温とDOおよびpHに高い相関が確認された.また,総水銀と各種水質指標との2変量相関分析の結果,水温およびpHに高い相関が得られた.さらに,従属変数をメチル水銀とし,強制投入法を用いて重回帰分析を行った結果,濁度に高い相関関係が確認された.
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