研究概要 |
大気中のVOCsは,市内の定点4地点の道路では高濃度のベンゼンやトルエンを検出した。また、この他,1.3-ブタジエンやクロロホルムも検出された。ベンゼンはガソリン由来によるもと考えられる。降雪のICP分析の結果、市内の雪からは、10.61mg/Lの高濃度のカドミウムと0.59mg/Lの砒素を検出した。これらは石炭燃焼灰に由来するものと推察される。さらに降雪をイオンクロマトグラフで分析した結果、ゲルの密集地の交差点では硫酸イオンが177mg/Lの高濃度であり、市内の他の地点でも70mg/L以上であることがわかった。 粉塵計による濃度測定の結果、冬季の粉塵濃度は0.005~0.68mg/m3であった。最も高い水銀濃度はゲル地区であった。2009年の大気中の水銀濃度は、冬季においてゲル地区では3.3(ng/m3)、UB市の中心街では5.7(ng/m3)であった。2010年の夏季の水銀濃度はそれぞれ2.0(ng/m3)と3.3(ng/m3)であった。現在、UB市の大気中の水銀の状況を把握するために常緑樹であるマツに注目し、マツの葉の中の水銀濃度について原子吸光分析法を用い測定している。この研究は、鹿児島大学大学院理工学研究科の冨安卓滋先生の協力を得ながら行っている。 モンゴルは石炭資源に恵まれた国であるが、モンゴルの石炭は水分や揮発性成分が多く燃焼効率があまり良くないと言われている。そのためゲルでの石炭燃焼量は増える傾向にある。その結果、冬季のUB市の朝夕は、約14万世帯のゲル地区からの石炭燃焼灰と火力発電所からの燃焼灰によりスモッグに覆われ逆転層が形成されている。現在、ゲル内部の石炭燃焼と室内の温度分布についても調査している。さらにモンゴル科学技術大学と連携をとりながら調査研究を行っている。
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