研究課題/領域番号 |
21404009
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
黒田 智明 立教大学, 理学部, 教授 (40158887)
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研究分担者 |
花井 亮 立教大学, 理学部, 教授 (30287916)
通 元夫 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (90163956)
大崎 愛弓 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (50161360)
廣田 洋 独立行政法人理化学研究所, 支援促進チーム, 特任職員 (00126153)
河原 孝行 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 研究グループ長 (70353654)
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キーワード | 中国横断山脈 / 多様性 / 天然物化学 / 系統樹 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
本年度の現地調査は7月下旬~8月中旬にかけて、中国四川省中部(宝興県~丹巴県)、同北西部(道浮県~徳格県~白玉県)、同南西部(稲城県~郷城県)および雲南省北西部香格里拉県にて実施した。キク科Ligularia属を中心に128試料を得た。徳格県、白玉県方面ではL. virgaurea、L. sagittaなどが主要な種であることを確認した。L. virgaurealについては詳細に調査採集を行い、四川省南西部では開花時期が明確に異なる2つのタイプがあることを見出した。帰国後直ちに行ったTLC分析の結果では、早咲きがligularol生産型、遅咲きがvirgaurenone生産型に対応していることを突き止めた。また、Ligularia属の雑種を2か所で発見した。Salvia属などについても昨年に引き続いて採集した。 並行して昨年度までに採集した試料の解析を実施した。Ligularia属では、形態的に類似種したL. duciformis, L. kongkalingensis, L. nelumbifoliaの3種の比較について研究成果をまとめることができた。これらの種はITS領域塩基配列では互いに区別できず、過去に頻繁に雑種形成を起こしたことが判明した。成分ではエレモフィラン生産型、オプロパン生産型、桂皮アルコール生産型、およびその他の4つに分けられ、セスキテルペン生産能は雑種形成によって得たと推定することができた。また、L. subspicataに特徴的な成分を、近縁属のParasenecio属から得るという興味深い結果を得た。Eupatorium属、Cremanthodium属、Iris属についても一部の種で成分とその多様性についての成果をまとめた。 以上について、9月と3月に研究報告会を実施して成果を共有するとともに、研究グループのホームページを更新した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたチベット自治区の調査は、本年度も自治区政府の許可が下りなかったため断念したが、代わりにチベット自治区に隣接する四川省白玉県および徳格県での調査を行うことができた。前年度までの試料の成分分析、DNA解析は順調に進行しており、成果公表もほぼ当初予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
Ligularia duciformisなどについての本年度の研究成果から、Ligularia属は分布域の端で雑種形成を起こし、それが進化、分化の端緒となっている可能性があることが判明した。これを踏まえ、次年度は標高から判断してLigulariaの分布域の南西部にあたると考えられる四川省中西部を詳細に調査する。今後は、雑種形成と進化、分化の関係をより詳細に明らかにするため、雑種の探索も進める計画である。それによってLigulariaの進化の全体像に迫りたいと考えている。また、地域特性を理解するため、Eupatorium属、Salvia属の調査も継続して行う。
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