研究課題
東アジア諸国が共有する東シナ海では、近年、急速な環境変化が進み、この海域に生息する魚類の安定的繁殖と次世代維持が揺らぎつつある。特に海水温の上昇(海洋温暖化)が魚類の繁殖に及ぼす影響は大きいと考えられる。そこで、これまでに我々が共同研究を通して構築した「東アジアにおける魚類の生殖研究ネットワーク」を活用し、東シナ海沿岸域において、「魚類繁殖に及ぼす地球温暖化に伴う海水温上昇(海洋温暖化)の影響」に関する国際共同調査を実施した。本研究では、特に日中韓と共同で海洋温暖化と人工化学物質が魚類の繁殖に及ぼす影響を、生理学的手法を用いて調べた。当初の予定は沿岸域の海産魚類に焦点を置いていたが、調査を進めるうちに河川河口域とその上流域においても温暖化および人工化学物質の影響を調査する必要があると判断し、ボラ・マハゼ・ハタ科魚類などの海産魚類に加え、ドジョウも対象生物といて、水温と化学物質の次世代生産に及ぼす影響を調査した。その結果、水温の上昇は魚類の生殖内分泌系に影響を与え、生殖腺発達の促進あるいは阻害を誘導することが分かった。また、環境水の温度が変化することで、水温依存性が強い魚類は、産卵時期を大きく変えることも明らかとなった。これは水温が生殖腺発達を制御する内分泌系に影響を与えた結果であると考えられる。さらに、温暖化のホットスポットとされる東シナ海沿岸域では依然として化学物質による魚類の生殖かく乱が続いていることが分かった。平成23年10月には、日中韓の研究者が長崎に集まり、これらの研究成果を発表した。
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