インドネシア西ジャワ州の山地では、18世紀後半から20世紀前半にかけて抗マラリア薬であるキニーネの材料となる南米原産のキナノキの世界一の産地であったが、第二次世界大戦後工業的に生産されるようになってから放置され、ゲデ・パンゲランゴ国立公園などの自然林にも侵入して問題になってきた。その分布拡大過程を詳しく調べるために一つの放置キナ園からの拡散状況の調査を行った。全体的にはキナ園から距離が遠ざかるほど個体数は減るが、立地によって侵入個体数の変化が大きく、その場所の光条件、水分条件なども大きく影響していると考えられた。 11月初旬には約1週間、インドネシアの保護区の状況について詳しい植物生態学の研究者をバンドン工科大学とボゴール農科大学から各1名鹿児島大学に招へいし、データの取りまとめについて議論した。 インドネシアの標本は同国のボゴール植物園に多く収蔵されているが、旧イギリスの植民地であったマレーシアやシンガポールの標本はシンガポール植物園に多い。マレーシア地域とインドネシア地域ではしばしば種名の不一致なども問題があるので、シンガポール植物園の標本館に1週間滞在し、移入種やクワ科植物の標本を検索し、マレー半島地域での分布や、インドネシア標本との相互参照を行った。。 3月の日本生態学会では今までの研究成果を発表した。 宮本は昨年までに得た材料のDNAの分析を継続して行うほか、投稿論文の準備をした。
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