研究概要 |
西ベンガル州森林地帯の治安に問題があったため,研究代表者の増田,分担者の谷は,現地研究協力者のHossainとともに,植民地期に同じBengal Presidencyを構成していたバングラデシュを訪問し,森林局における資料収集を行うとともに,国有林管理の現場を2ヵ所訪問した.いずれも植民地期における林地画定の根拠が,独立以降は不明瞭になり,画定以前の権利を主張する住民や新たに移入した住民が可耕地の大半を占拠していた.森林局は不法占拠者の排除を断念し,次善の策として社会林業,すなわち占拠した国有林における植林を奨励していた.西ベンガルの少なくとも平野部では,国有林の境界は維持されており,両者の際だった対比が植民地期に端を発するものか,独立以降のプロセスによって生じたものかを今後明らかにする必要があることが確認された. 一方10月に現地研究協力者のLilikは,昨年度に引き続き,Simonapendiとともにネパールのチットワン県におけるコミュニティ林業における森林動態についてグランドトゥルースを行った.Simonapendiは1~3月にチットワン再訪し,二次資料収集とともに,参加者の森林資源利用に関する世帯調査を実施した.両者の結果はまだ分析中である. 研究分担者の葉山は,フィリピンのコミュニティに基盤をおいた森林管理が成功しない理由を,他の社会活動における継続性をみることによって,フィリピン社会の特質に見出すべく,ミンダナオ島で調査を実施した. 以上の経過について,2012年2月に研究代表者,分担者および現地研究協力者を交えてセミナーを開催し,インド,ジャワ,ネパールおよびフィリピンの参加型森林管理の比較を行い,その成果を3月の日本森林学会において発表した.
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