研究分担者 |
後藤 晃 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (30111165)
酒井 治己 独立行政法人水産大学校, 水産学研究科, 教授 (80399659)
宗原 弘幸 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (80212249)
高橋 洋 独立行政法人水産大学校, 水産学研究科, 助教 (90399650)
横山 良太 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 学術研究員 (40532403)
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研究概要 |
繁殖巣の分布:カジカ類の適応放散の要因として,造巣に適した石をめぐる種間競争に着目し,夏季での繁殖巣の分布実態を調査した.集団における,種間の生物量および繁殖期やその長さは,安定した状態ではなかったが,カジカ集団の繁殖期の時期や長さに影響を与える変動要因を明らかにする必要がある.変動要因としては,水温などが考えられた. 沖合性カジカの仔魚分布:沖合性カジカ類の個体発生を比較すると,ComephorusがCottocomephorusから分化したとは考え難く,Comephorusは底生性深部のカジカ類から分化したか,もしくは独自の適応放散をなした可能性がある.形態的に注目すべきは,Comephorus Bでの楕円形の眼球とCottocomephorus Bでの眼上のコロイド状隆起である.前者は,海域の中深層魚類仔魚にもよくみられ,餌となる動物プランクトンの低密度な環境に適応した形質と思われる. Procottus属におけるロドプシン遺伝子の適応進化:カジカ類に特徴的な深部への適応放散過程を明らかにするために,水深5-900mの中深層域まで分布し,各種で生息水深が異なっているProcottus属の4種,P. major, P. jeittelesii, P. gurwiciとP. gotoiを,ロドプシンの分子系統解析を行いその分子進化パターンを推定した.その結果,中立遺伝子座では分化が見られないほど近縁なProcottus種間であっても,機能的遺伝子座のロドプシンには淘汰がかかっており,生息水深に合わせて種ごとに適応分化していることが明らかになった. 沖合性カジカCottocomephorus属の集団構造分析:C. grewingkiiとC. alexandraeは極めて近縁であり,mtDNAでは区別できなかった.一方,両種で見いだされた2つのクラスター間の遺伝的差異はわずかであり,より精度良く種判別や集団構造推定を行うには,検出座数を増やす必要がある.もし,2つのクラスターが両種を判別できるならば,本調査時期においてボリショイコティー沖にはC. grewingkiiの成魚と仔魚およびC.alexandraeの仔魚が生息していることになり,成魚のみ棲み分けが見られる可能性がある.
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