研究分担者 |
後藤 晃 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (30111165)
酒井 治己 独立行政法人水産大学校, 水産学研究科, 教授 (80399659)
宗原 弘幸 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (80212249)
高橋 洋 独立行政法人水産大学校, 水産学研究科, 助教 (90399650)
横山 良太 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 学術研究員 (40532403)
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研究概要 |
1.種系統推定と生息水深に応じた視覚適応:Procottus属の4種,P.gotoi(生息水深3-150m),P.gurwici(5-250m),P.jeittelesii(15-200m)およびP.major(50-900m)のcytchrome b, RAGI, rsp7Sとmyh6の各遺伝子座について塩基配列を解析したところ,それらの系統樹は種ごとに相互単系統にはならず,また遺伝子座ごとにその系統関係は異なっていた.また,種の系統関係は明瞭ではなく,本属魚類は極めて短い時間で種分化したものと推定された.一方,本属魚類の視物質には種間で明瞭な違いがあり,生息環境に対して適合していた.このことから,本属魚類は種分化してからの時間が短く,生息水深への適応に関連する遺伝子は種間で機能的な分化が見られ,淘汰による適応分化が生じていると考えられた. 2.Cottocomephorus属3種の系統分析:沖合表層生活者であるCottocomephorus属魚類のmtDNA解析による系統分析を行ったところ,C.inermisとC.grewingkiiは多系統と示唆された.また,C.grewingkii, C.inermisと前者と区別ができなかったC.alexandraeは互いに極めて近縁であり,mtDNAでは区別できないことが示唆された.これら3種は核ゲノムマーカーであるAFLP法などにより区別できる可能性があるが,今回,エタノール固定法では良質(断片化の進んでいない)ゲノムDNAを抽出できなかった.従って,良質のゲノムDNAが抽出可能なサンプルを持ち帰ることが必要である. 3.沖合における仔稚魚分布と物理環境の把握:本年度は,バイカル博物館所属のR.V.テレシコフ(30t)を使用でき,沖合域でのComephorus属とCottocomephorus属仔稚魚の水平・鉛直分布および物理環境(水温,濁度,DO,光量子,クロロフィル)をより詳細に把握できた.その結果,前者の仔稚魚は水深1,000mまで分布し,同属2種間で分布層が異なっていたこと,さらに後者の仔稚魚は水平的には沿岸域表層を中心に分布するが,同属種間で微妙な違いがみられた.
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