研究概要 |
本年度も、南部マダガスカルのベレンティ保護区に生息するワオキツネザル野生個体群を対象に、現地調査とともに長期的な人口動態や社会生態学的データの分析、遺伝学的資料の解析等を進めた。 現地調査は3回にわけて実施した。まず、2010年4月~5月に、研究協力者の市野が交尾期での性行動を観察するとともに、2009年度出産個体の確認等をおこなった。その結果、2009年度の新生児が1頭も生残しておらず、死亡率が100%に達したことが判明した。 さらに9~10月にかけて、研究協力者の市野と宮本が人口学的資料を収集するとともに、2010年度の出産を確認した。現在、これらの結果をもとに個体群動態を分析している(高畑、市野、宮本)。とくに、2006年度以降、ワオキツネザルの個体群は頭数が減少傾向にあり、2010年度は新生児をのぞいて53頭になった。原因として、食物資源等をめぐって競争関係にあるチャイロキツネザルの増加、人工的給水の停止等の複合要因が考えられる。なお、2010年度の新生児は20頭だった。 2010年12月~1月には、研究分担者である茶谷がコモーションと顔面形態のデータ収集をおこなったほか、市野・宮本の調査で出産した新生児の生残率等に関する資料を収集した。 一方、研究分担者である川本は市野と協同で、京都大学霊長類研究所において1998年以降の現地調査で採集されたワオキツネザルの遺伝的資料の分析を継続している。この遺伝学的分析では、1,全個体の遺伝子型の分析による、ワオキツネザル個体群の遺伝構造の解明、ならびに2,新生児の父子判定によって、ワオキツネザルのオスの繁殖成功の解明が期待できる。
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