研究課題/領域番号 |
21405015
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
高畑 由起夫 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (90183061)
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研究分担者 |
川本 芳 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (00177750)
茶谷 薫 名古屋芸術大学, 音楽学部, 講師 (80278530)
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キーワード | ワオキツネザル / マイクロサテライト遺伝子座 / 個体群動態 / 採食生態 / 捕獲調査 / 生体計測 / 植物サンプル採集 |
研究概要 |
本研究は、ホミニゼーションにおいてヒト特有の生活史特性が進化した要因を明らかにするため、マダガスカル島に生息する原猿類、とくにワオキツネザルの野生個体群を対象にしたフィールド調査で、1.メスの生活史と繁殖成功、2.老齢個体の生存や繁殖特性、3.オスの生活史と繁殖成功、4.個体群の遺伝的構造の関係、5.形態(歯・生体計測・骨格等)等の資料を収集し、分析することを目標としている。 2011年度では、マダガスカル共和国ベレンティ保護区におけるワオキツネザル野生個体群を対象として、川本芳・茶谷薫(研究分担者)と研究協力者2名(相馬貴代、佐藤宏樹)が1.捕獲調査による遺伝子資料の収集、2.個体群動態資料、3.行動学的資料、4.ロコモーションと形態学的資料の収集をおこなった。さらに近縁種による比較資料を得るため、佐藤は数週間、近縁種であるチャイロキツネザルを観察する目的でアンカラファンツィカ国立公園等での調査を遂行した。 さらに2009~2010年度に現地で収集したDNA試料について、京都大学霊長類研究所において川本芳(研究分担者)と市野進一郎(研究協力者)が引き続き1.ミトコンドリアDNAのDループ領域、ならびに2.2塩基から4塩基の反復配列多型を示すマイクロサテライトの分析による父子判定や、遺伝学的特徴の分析を進めている。 また、蓄積された個体群資料にもとづいて、ワオキツネザルの長期的な個体群動態についての分析を進め、メスの生涯繁殖成功ならびにその個体変異等について解析した(高畑、市野)。さらに、1999年、2006年、2011年の捕獲調査における体重測定の結果を比較したところ、2006年度から成体の体重が約1割減少していること、オトナメスの出産率は減少していないが、幼児死亡率が激増していること。この結果、個体数の減少が著しいことが判明した(高畑、市野、茶谷)。これらの結果によって、ワオキツネザルの個体群特性を明らかにしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ワオキツネザルの生活史特性について、とくに個体群動態ならびにその体重の変化等については世界的にも貴重な長期的資料が蓄積され、各種の分析も進みつつある。同時に、遺伝学的資料についても解析が進んでおり、多くの知見が得られることが期待できる。さらに形態学的な資料についても興味深い事実が明らかにされつつある。
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今後の研究の推進方策 |
5年計画のうち3年が修了している段階にあるが、すでに収集・分析を進めたデータに基づく論文の作成等にとりかかるとともに、遺伝的変異等の分析をさらに進める予定である。さらに、ワオキツネザルの近縁であるチャイロキツネザル等を対象とする調査も含めて、さらに多様な資料の収集を進める予定である。
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