中国南西部の湿潤地域を対象とした研究においては、昨年度に雲南省元陽県の農村にて収集した100余戸の農家からなる空間マイクロデータを用い、農家の行動メカニズムについて詳細な分析を行った。中でも、分散錯圃が農家の土地利用と水利用に関する決定におよぼしている影響、および農外就業機会が農家の土地利用と水利用に関する決定におよぼしている影響について重点的に分析を行った。同時に、調査地域において環境的にもまた観光資源としても高い価値を持つ元陽棚田の地理的な構造およびその時系列的な変遷を理解するため、ランドサット衛星の画像を用いたリモートセンシングを行った。その上で、これらの成果を組み合わせることにより、どのような外生環境の下では元陽棚田の持つ景観が将来的に失われてしまう可能性が高いか、またそれを防ぐためにはどのような政策的介入が社会的に最適か、分析した。 中国北西部の乾燥地域を対象とした研究においては、昨年度に甘粛省張掖市の灌漑地域にて収集した情報を基に、引き続き現地の水取引を再現した非線形計画モデルの開発、およびそれを用いた最適な政策的介入に関する分析を行った。加えて、当該地域についてもランドサット衛星の画像を用いたリモートセンシングを行うことにより、乾燥地域において水資源集約的な現金作物の生産が発展するかどうかを規定している地理学的および社会経済学的要因を分析し、中国における土地制度改革をメカニズムデザインの観点から評価した。
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