研究課題/領域番号 |
21405026
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山尾 政博 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (70201829)
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研究分担者 |
山下 東子 明海大学, 経済学部, 教授 (50275822)
赤嶺 淳 名古屋市立大学, 大学院・人間文化研究科, 准教授 (90336701)
鳥居 享司 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (70399103)
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キーワード | 東アジア巨大消費市場 / 食料産業 / 分業化 / 鮮魚輸出 / マグロ貿易 / 資源管理 / 秋サケ / 中国 |
研究概要 |
本年度の研究では、まず第1に、統計資料の分析等によって、東アジアの貿易が大きな転換局面にさしかかっていることが明らかになった。中国が水産物輸出入の比率を高め、輸入においても日本を抜いて世界第1位となった。これには二つの要因があり、ひとつは国内市場向けの水産物輸入が急激に増えていること、今一つは、世界のフードチェーンに対して高次加工品を供給する食品産業の成長が続き、原料輸入が増えていることである。第2に、アジアに出現しつつあるマグロ消費需要とマグロ貿易の動向を明らかにした。日本食の普及に伴う寿司・刺身消費が増大する一方、日本向けマグロ輸出では、生鮮・冷凍品に加えて、外食・中食チェーン等で用いられる加工品の割合が増えている。マグロ資源の持続的利用と管理をめぐって国際紛争に発展するケースが増え、生産国,加工国,消費国の利害対立が激しくなっている。第4に、日本の水産業と東アジアの食品産業との分業関係がいっそう深化していることである。東南アジアのマグロ製品及びカツオ節等の対日輸出について調査を実施した。日本の水産業も、加工原料の供給担い手として東アジア食品産業のなかに組み込まれつつある。北海道の秋サケは、中国の食品加工企業がEU向け製品の原料として利用されている。輸出製品に必要な認証や衛生管理を秋サケ産地に求めるなど、グローバル貿易の波が押し寄せている。第5に、東アジア域内における塩干魚・活魚・鮮魚などの貿易が活発になっている。関連して、中国向け鮮魚輸出で先駆的な役割を果たしている日本の長崎魚市は、上海市を拠点にその販売網を広げている。東アジアの巨大水産物消費市場の中に西日本の水揚げ産地が組み込まれつつある実態が明らかになった。在来型水産物貿易の拡大は東アジア全域にわたってみられる現象である。
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