研究課題/領域番号 |
21405029
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
吉永 健治 東洋大学, 国際地域学部, 教授 (40392576)
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研究分担者 |
八丁 信正 近畿大学, 農学部, 教授 (00268450)
吉田 謙太郎 長崎大学, 環境科学部, 教授 (30344097)
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キーワード | 気候変動 / 水制約 / 農業生産貿易 / 食糧安全保障 / 水管理と水制度 / 不確実性と適応策 / 貿易ルール |
研究概要 |
本研究の目的は気候変動等による水制約が輸出国の農業生産と貿易に与える影響およびその結果が日本の食糧安全保障にどのような影響を与えるかについて分析するものである。21年度は現地調査を中心に作業を進め、米国・カリフォルニア、オーストラリアにおける政府機関、大学、研究機関と気候変動による農業部門への影響に対する取り組みや分析に関して聞き取りを実施し、またOECD、FAOおよびIFADにおいて水市場や水価格などの水制度および食糧安全保障に関する議論を実施した。これらの調査を通じて、今後の研究の進め方に関して以下のような結論を得ることができた。 (1)いずれの機関においても農業部門における気候変動の影響に関しては研究や議論を開始した段階で、特に水資源と農業生産への影響についての分析事例は少なく、本研究においては何らかのシナリオを策定して分析する必要がある。 (2)多く研究機関が気候変動モデルを開発中であるが、グローバルレベルでは国や地域レベルの水資源への影響を詳細に把握できず、流域あるいは地域レベルのモデルを開発している。特に、FAOは最も気候変動の影響が大きいとされるモロッコを対象に国レベルでのモデル、将来は同モデルをツールキッド化する方向で分析を進めている。モデルの内容は本研究の目的に最も近いものである。 (3)気候変動による水制約に関する不確実性に対しては適応政策で対応する以外になく、適切な水管理や水制度の確立など確実性に対応することから始める必要がある。 (4)本研究の目的や課題に関しては、有意義な内容という意見がある一方で、気候変動による農業生産への影響は貿易システムによって対応可能であるとの意見があり、こうした意見を考慮すべきである。 (5)まとめとして、今回の現地調査を通じて、気候変動による水制約による農産物及び貿易への影響は、まず限うれな水資源を有効に活用するために水管理、水制度、水供給システムのリハビリなど現在確実に対応できる適用策から開始する必要があること、また、農産物の貿易および食糧安全保障に対しては、将来気候変動に伴う農産物貿易への影響を回避するためにWTOやGATTなど国際的な貿易ルールの改正を含めた対応策について事前に準備を進めておく必要がある。
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