研究概要 |
本研究の目的は,おおまかに以下の次の2点である。 (1)タリム河流域の農業水利の把握と合理的な水土利用の検討 (2)圃場における塩類集積発生の詳細な要因分析と劣化の抑制の方途の検討 今年度は本研究の最終年にあたり,現地調査(2011年8月,11月の2回)ならびに研究成果の取りまとめをおこなった。以下に研究成果の要点を示す。 (1)この地域の配水管理状況から,地域特有の灌漑ルールの妥当性と問題点を検討した。その結果,灌漑ルールは合理的と判断された。しかしながら,かならずしも末端水路では厳格なルールの適用がなされていなかった。その原因として,作物生育状況などの諸事情を水管理に反映できる仕組みが存在することが影響しているものと推察された。 (2)地下水位変動の相違がみられない複数の圃場,あるいは同一圃場において,塩類集積の発生状況が異なる原因として,土壌の物理的構造と空間配置(土性と分布状況)による透水性の違いが,塩類の溶脱の程度に影響し,その結果,圃場内の塩類分布状況に偏りが生じるため,その後の毛管上昇による塩類の集積にばらつきが生じる可能性のあることが推察された。 広域的な塩類の収支を求めたところ,ナトリウムイオンは流域から流出するものの,その他の塩類については流域内に貯留する傾向にあることがわかった。一方,土壌調査と水質調査から,この流域では下流ほどナトリウム化のすすむ可能性のあることが示された。地域としての塩類対策としては,よりナトリウムの排出をすすめる必要があると判断された。 また,3カ年の調査研究の成果報告会を年度末に開催した。
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