マレック病(MD)は、マレック病ウイルス(MDV)の感染を原因としてT細胞に悪性リンパ腫をもたらす鶏の疾病である。現在、MDはMDV弱毒株および非病原性のMDVを用いた生ワクチンによってほぼ制御されているが、近年野外で分離されるMDVは強毒化の傾向にあり世界各地でワクチンブレークが散発し問題となっている。またMDVの自然宿主は従来鶏やウズラであるとされてきたが、野生水禽に高率で強毒株MDVが感染していることが分かり、MDVによるリンパ腫発症機序の解明と新たなワクチン戦略の開発が望まれている。これまでの感染実験や疫学調査の結果から、マガンなどはMDに対する抵抗性を保持している可能性があり、本研究ではMDVに対する防除法の開発のために、マガンなどに存在するMD抵抗性を示す免疫機構を探ることを目的として行った。 昨年度は、マガンにおけるMD抵抗性に重要な宿主因子して、プロモーター領域の調節によるinterferon(IFN)γの低発現が関与する可能性を示した。今年度は、さらに詳細を検討するために、他の野生水禽(マガモなど)について、IFNγ遺伝子プロモーター領域の解析を行った。その結果、マガモなどの野生水禽でもマガンと類似の配列を有しており、このことが、これら野生水禽のMD抵抗性に関与していることが示唆された。しかしながら、MD抵抗性がIFNγ遺伝子プロモーター領域のみで決定するとは考えられず、他の因子も関与していると思われる。そこで、自然免疫に重要なNK細胞の活性に影響を及ぼす抑制性レセプターB-lec遺伝子のプロモーター領域について解析した。その結果、野鳥では遺伝子クローニングが完了しなかったが、鶏由来遺伝子の解析では、抵抗性鶏と感受性鶏でプロモーター活性化に差がみられ、MD抵抗性に関与することが示唆された。今後、さらに詳細に検討を行う必要がある。
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