研究課題/領域番号 |
21405035
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
苅和 宏明 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 准教授 (70224714)
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研究分担者 |
好井 健太朗 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教 (50421988)
有川 二郎 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10142704)
森松 組子 北海道大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (90220722)
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キーワード | 人獣共通感染症 / ハンタウイルス / ウエストナイルウイルス / げっ歯類 / 鳥類 |
研究概要 |
ハンタウイルスの抗体検出系の開発 メキシコのげっ歯類における抗ハンタウイルス抗体をより高感度に検出するために、メキシコ由来のハンタウイルスの組換えヌクレオキャプシド蛋白質を抗原としたELISAを確立した。 メキシコにおけるハンタウイルス感染の疫学調査 2006年にメキシコ国内でげっ歯類の疫学調査により、メキシコのげっ歯類が少なくとも3種類のハンタウイルスを保有すること、しかもメキシコのげっ歯類が保有するウイルスは既知のハンタウイルスのいずれとも異なることが明らかになった。 本年度は2006年と2007年の調査で得られたげっ歯類の検体について、ウイルスのS遺伝子とげっ歯類のチトクロームb遺伝子の配列を決定した。これらの遺伝子の解析によりメキシコで新規に検出された3種類のハンタウイルスのうち、Montano virusとCarrizal virusが、それぞれPeromyscus beataeとReithrodontomys sumichrastiを宿主とすることが明らかになった。 メキシコのハンタウイルスに対するモノクローナル抗体の作出 メキシコのハンタウイルスの一種であるMontano virusの組換えヌクレオキャプシド蛋白質に対してモノクローナル抗体を作出し、メキシコのウイルスやその他のウイルスに対する反応性を比較した。その結果、作出された6種類の抗体のうち5種類はメキシコの3種類のウイルスに対して反応するだけでなく、南北アメリカ大陸、ヨーロッパ、およびアジア由来のげっ歯類媒介性ハンタウイルスに対しても反応する交差反応性の高い抗体であることが判明した。したがって、Montano virusのヌクレオキャプシドタンパク質は多種類のハンタウイルスに共通して存在する抗原領域を保有することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目的に掲げた4つの項目において、予定した以上の進捗が見られている。 a)診断法の開発:ELISAが血清診断法として確立され、感染げっ歯類の検出が容易になった。 b)疫学調査:多数の感染げっ歯類から検出されたウイルス遺伝子や、げっ歯類の遺伝子解析が大きく進展した。 c)ウイルスの性状解析:ウイルスの遺伝子性状が明らかになっただけでなく、メキシコのウイルスを保有する宿主が特定された。 d)ウイルスの抗原性解析:モノクローナル抗体を作出して、メキシコのハンタウイルスの抗原性状を解析した。得られた抗体は非常に広範囲のウイルスに対して反応することから、ハンタウイルス感染症の診断用試薬として有用であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
我々は現在もメキシコでの疫学調査を継続しており、まずは2009年の疫学調査で得られたげっ歯類や翼手類の検体を用いて、野生動物におけるハンタウイルス感染状況の解析をさらに推進する。 これまでにメキシコでは人のハンタウイルス感染症は報告されていないが、本研究によりメキシコのげっ歯類がハンタウイルスを保有していることが明らかになった。そこで、メキシコ国内における人の抗体検査を実施して、人においてハンタウイルス感染症が本当にないのか、それともこれまで見逃されてきたのかについて明らかにしたいと考えている。
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