タイ国ナコンシタマラート県クアンクレン泥炭湿地において、乾地化状態と湛水状態での泥炭土壌からのメタン放出量をクローズドチャンバー法により測定した。地下水位が-30cm以深の乾地化状態では湛水状態に比べてメタン放出速度が低かったが、地下水位が-20cmの乾地化状態では湛水状態と同等のメタン放出速度を示した。湛水状態でのメタン放出速度は、0.1mgCH_4m^<-2>h^<-1>程度であり、メタンの温暖化係数を21として年間のメタン放出量を二酸化炭素当量に換算すると0.05 tC ha^<-1>y^<-1>となり、再湛水化により期待される二酸化炭素放出抑制効果を相殺するほどには大きくないことが明らかとなった。メラルーカ(Melaleuca cajuputi)を経由したメタンの放出量を測定するための方法の検討を行った。タイ国ソンクラー県の造林研究センターにおいて、ボックスに泥炭土壌を詰めて湛水させ、メラルーカ実生を植え付けて、泥炭土壌のみを覆ったチャンバーとメラルーカも含まれるようにして覆ったチャンバーを用意し、メタン放出速度を測定した。メラルーカを含むチャンバーは必然的に容積が大きくなるのでメタン放出を検出できるかどうかが懸念されたが、検出できることを確認した。予備測定の段階ではあるが、メラルーカを含むほうがメタン放出速度が大きかった。成木からのメタン放出量の把握のために、地際近くで切断した幹の切断面からのメタン放出を測定した。個体による変動が大きく、定量には今後のデータの蓄積が必要であるが、切断面からのメタン放出を検出できることを確認した。また、幹表面をチャンバーで覆ってメタン放出速度を測定したところ、メタン放出の検出が可能であることを確認した。
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