研究課題
Melaleuca cajuputiの樹幹表面からのメタン放出に関して、樹液流速度と同調するようなメタン放出速度の時間変化が前々年度に確認されたため、早朝の樹液流速の上昇時のメタン放出速度の変化を測定した。測定法は従来通り円筒形のチャンバーで幹表面を覆うクローズドチャンバー法を用いたが、チャンバー内のメタン濃度の時間変化を回帰する方法にHMモデルを適宜採用することにより回帰の精度を高めた。未明から夕方にかけてメタン放出速度の増大が認められたが、樹液流速度の日変化との明瞭な関係は認められなかった。M. cajuputiに発達する層状の厚い樹皮が樹体を介したメタン放出の経路として機能しているかどうかを確認するために、メタン放出の測定チャンバーの取り付け位置より下の幹の樹皮を環状に剥離し、剥離前後でのメタン放出速度の変化を調べた。同時にCO2放出速度も測定した。樹皮剥離によって樹幹表面からのメタン放出速度が4割以下に低下したことから、樹幹表面から放出されるメタンの多くは樹皮を経由していることが示された。湛水条件におけるM. cajuputiの樹体からのメタン放出は個体間差異が大きかったが、その主な要因は樹皮経路からの放出量の差異であった。しかし、樹皮経由のメタン放出速度が大きな個体は木部経由のメタン放出速度も大きかったことから、メタンの供給源である土壌中のメタン濃度の不均一性が幹からのメタンの放出の個体間差異をもたらしている可能性がある.樹皮経由のメタン放出速度とCO2放出速度との間に相関関係があったことから、樹皮内部の空隙の様態の違いによる通気特性の違いや樹皮周囲への漏気性の違いなどが樹皮経由のメタン放出速度に影響を与えている可能性が示唆される.非湛水時には樹皮経由のCO2放出が不検出の個体があったことから、土壌中における樹皮周囲のガス拡散特性が地上部の樹皮経由のガス放出に影響を与えていることが示唆される。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Mires and Peat
巻: 11 ページ: 1-20