研究概要 |
本研究の目的は,熱帯アフリカ東西に位置するタンザニア・カメルーン両国(周辺国を含む)において,「生産生態資源分布の不均一性および営農におけるその積極的利用」の例を複数抽出し,そこに含まれる生態学的プロセスを検討することである。平成23年度には,両国における詳細な農業生態系の調査を行った。 1)タンザニア国モロゴロ州において,気候・地質条件を異にする調査地をウルグル山塊周辺に4地点設置し,生産生態資源分布の不均一性をもたらす要因の一つである土壌侵食発生条件を検討した。その結果3地点において,降雨イベント内の総降雨量や降雨強度の大小関係によることなく,土壌水分が乾燥している時期(例えば雨季初期)には表面流去水発生は抑制されるが,土壌水分が湿潤である時期(例えば雨季中期以降)には表面流去水発生の危険度が高まることが示された。 2)カメルーン国東部ベルトゥア周辺(フェラルソル分布域)の森林・サバンナおよびこれらを開墾した農耕地計4地点に試験地を設定し,環境モニタリングおよび農耕地における物質動態の解明を目的とする圃場実験を行った。その結果,特に窒素動態に関して興味深い知見が得られた。すなわち森林では高濃度のNO_3^-がK^+,Mg^<2+>,Ca^<2+>を下層へと溶脱させる駆動力となっているのに対し,サバンナでは有機酸が陽イオン累を溶脱させているがその量は森林の半分以下と小さかった。土壌データともあわせて,森林およびこれを開墾した耕地では窒素が,サバンナおよびこれを開墾した耕地では炭素が,相対的に過剰となり陽イオン類の下方浸透に寄与していることが示された。 3)両国の試験地を含む周辺地域で広域調査を行い,土壌資源,農民の土地利用等に関する情報を収集した。 これらの結果に基づき,生産生態資源分布の不均一性が土壌の養分動態,さらに作物の生育に直接影響を及ぼす一連の生態学的プロセスを解析中である。
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