研究概要 |
セミパラチンスク旧ソ連核実験場周辺住民の被曝様式は、広島の被爆様式とはまったく異なっていることから、悪性腫瘍の発生様式も異なっている可能性がある。本研究では、セミパラチンスク核実験場周辺住民のMDS・白血病の症例数をさらに増加させ遺伝子学的特徴を明らかにする。特にAML1遺伝子変異、及びAML1変異と協調してMDS・白血病発症に関与していると考えられるN-RAS, SHP-2, NF1, FLT3の遺伝子変異、さらにP53変異,P15メチル化異常について解析する。次に被曝線量を導入して、線量、性別、被曝時年齢等の効果について原爆被爆者との比較を行い、被爆様式の違いによる差異を明らかにすることを目的としている。そこでセミパラチンスク市のカザフ放射線医学環境研究所、市診断センター、市救急病院と連携して、セミパラチンスク核実験場周辺住民のMDS・白血病症例のスライド標本と患者情報収集を継続している。また分子疫学的解析のために必要なコントロールとしてアスタナ市地区の症例も利用している。そこで現地の市立病院血液病科を訪問し、特にMDS・白血病についての発生状況、診断・治療法について意見交換した。また広島原爆被爆者に発生したMDSについて、前回統計解析を施行後10年が経過し、新たに多数の症例が集積されかつ遺伝子解析のデータも得られてきたため、統計解析及び分子疫学的解析を再度行う準備をすすめている。
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