研究概要 |
セミパラチンスク旧ソ連核実験場周辺住民の被曝様式は、広島の被爆様式とはまったく異なっていることから、悪性腫瘍の発生様式も異なっている可能性がある。本研究では、セミパラチンスク核実験場周辺住民のMDS・白血病の症例数をさらに増加させ分子遺伝学的特徴を明らかにする。特にAML1/RUNX1遺伝子変異、及びAML1/RUNX1変異と協調してMDS・白血病発症に関与していると考えられるN-RAS,SHP-2,NF1,FLT3の遺伝子変異、さらにP53変異について解析する。次に被曝線量を導入して、線量、性別、被曝時年齢等の効果について原爆被爆者との比較を行い、被爆様式の違いによる差異を明らかにすることを目的としている。そこでセミパラチンスク市のカザフ放射線医学環境研究所、市診断センター、市救急病院と連携して、セミパラチンスク核実験場周辺住民のMDS・白血病症例のスライド標本と患者情報収集を継続している。一方原爆被爆者のMSD・白血病については、MDS/白血病(芽球が5%以上認められるMDSと三血球系統の異形成を伴った白血病が含まれる)の遺伝子解析が進んでいる。最近集計したMDS/白血病248例にしめるAML1/RUNX1点変異陽性率は、原爆被爆者13/36(36%)に対して非被爆者35/212(17%)と、被爆者では有意に高頻度であった。このことからAML1/RUNX1の点変異は放射線誘発のMDS/白血病にかなり特徴的な遺伝子変異であることが明らかになった。この点からはセミパラチンスク周辺の被ばく住民と広島の原爆被爆者では被爆様式は異なっているが、MDS/白血病を発症する主要な分子遺伝学的メカニズムは共通していると言える。
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